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院長コラム | いとう歯科診療室

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Basic Course2025への参加 世界基準の根管治療を目指して⑧

2025/12/08



今回は生活歯髄療法(VPT:Vital Pulp Therapy)についての講義でした。

 

はてVPTとは?歯髄療法?

 

実は日常臨床でVPTを行うか悩む場面に多々遭遇します。

例えば、痛みはないけど深いむし歯で歯髄(神経と血管を含む組織)ギリギリまで進行していて、むし歯を取り切ったときに少し歯髄が露出するケース。

転んだり、野球のボールがぶつかって歯が折れたり、欠けたりして歯髄が露出するケース。

これらのケースに関しては、歯髄に感染や炎症が生じてない可能性もあり、なんとか歯髄を保存し、歯を生きた生活歯のまま保存できないか、と試行錯誤するわけです。これがVPT。

VPTにも色々と方法があります。

 

  • 歯髄が露出した部分を被覆して、歯髄を保存する方法:Direct Pulp Capping
  • やや歯髄に感染が疑われる場合、一部分歯髄をとって被覆する方法:Partial Pulpotomy
  • Partial Pulpotomy より確実に感染が疑われる歯髄をとるため歯冠部歯髄を除去して被覆する方法:Full Pulpotomy
  • 歯髄に近接したむし歯を残して周囲の健全歯質で封鎖する方法:Indirect Pulp Capping

 

ちなみに、深いむし歯でズキズキ痛むような自発痛がある場合、コールドテストで痛みを感じ、痛みが持続する場合などは、歯髄が感染・不可逆性の炎症を生じているので抜髄(いわゆる神経を抜く処置)へと移行します。

 

我々、開業医であれば、歯髄を除去した歯、つまり失活歯の歯根破折(根っこごと割れてしまうトラブル)に悩まされることが多く、なんとか歯髄を保存できないか悩むわけですが、本来、VPTは若年者(20歳前半くらいまで)に適応される処置であるとのことでした。これは年齢を重ねるにつれ、歯髄の神経組織、血管組織が少なくなって回復能力が低下するためと言われています。

そう考えると歯髄の老化は20歳以降で生じてくるので、老化が早い部分と言えるかもしれません。

 

Bjondalらの研究によると成人のDirect Pulp Cappinngの成功率は31.8%、
成人のPartial Pulpotomyの成功率は34.5%です。

逆に小児患者におけるDirect Pulp Cappingの成功率は94.5%(Parinyaprom2018)、
小児のPartial Pulpotomyの成功率は96%となっています。

 

つまり小児や若年者であれば歯髄を保存できる可能性は極めて高く、成人では難しい処置となります。

 

でも、自分の医院ではどうだろう??

結構、成人にもDirect Pulp Cappinngしていますが、今のところ成功率は50%くらいと感じています。

これはカリエスの進行具合や、歯髄組織の活性の個人差によるものでしょう。

歯髄腔が小さくなって、組織の活性が落ちているような中高年では難しいかもしれませんが、症例を見極めてチャレンジする価値はあると思っています。

 

日本では頑張って歯髄を残そうとする各種処置の治療費が激安なので、いちかばちかやってみましょうとなりますが、すべての処置で高額な診療費がかかる米国では、成功率30%ほどの治療を患者に勧めることはありません。なのでそれほど熱心に研究は行われてないと思います。

 

しかしながら・・・、諦める事なかれ。

成人でも歯髄を保存できる成功率の高い処置が実はあります。

それは

・成人のFull  Pulpotomyは98.4%の成功率(Taha 2018)

・成人のIndirect Pulp Cappingは98%の成功率(Jordan 1971)

 

健康な歯髄に見えても感染しているか、炎症があるかを科学的に判断する方法がないので、老化が始まっている、再生能力の乏しい成人の歯髄では、確実に感染・炎症歯髄を除去した方が成功率が高いのでしょう、これらの理由から成人のVPTではFull Pulpotomyの成功率が極めて高いのだと言えます。

Indirect Pulp Cappingは歯髄に近接したむし歯、これを除去したら歯髄が露出してしまう様な場合に、わざと一層むし歯を残して、その周囲はむし歯を取り切って封鎖し、むし歯菌の活性を止めて、進行を食い止める方法です。つまりは虫歯菌の飢え殺し。これは封鎖が何しろ大切なので、その後の補綴処置が重要になります。

 

おいおい、むし歯残すって?

 

と思われた方もいると思いますが、私は今まで乳歯では独自に考えて行っていた方法なので、成人でもうまくいくようなイメージがあります。

乳歯の場合、生え替わりまで保存できればOKなので、痛みがない深いむし歯はあえて攻めずに、周囲をとってサホライドを塗布して、塞ぐ、そうするとそのまま生え替わりまで保存できることがほとんどです。

 

 

VPTについて、

小児は自発痛さえなければ、どの方法でも歯髄を保存できる確率は非常に高い。

 

じゃあ、成人の場合はどうなのか、まとめると・・・。

 

 

・症例の選択によるかもしれないが、ほぼむし歯を取り切れた段階で歯髄が露出した場合:Direct Pulp Cappingを試みる。ただし成功率は半々。

・もっと確実性を求めるなら歯冠部歯髄を除去する:Full  Pulpotomy

・そもそも歯髄に触れたくない場合は:Indirect Pulp Capping

 

という選択肢になるかなと思います。

 

繰り返しになりますが、Direct Pulp Cappingの成功率が低い理由は、歯髄までむし歯が及んでいる場合、どこまで歯髄の炎症が進んでいるか、科学的に判断する基準がないからです。

 

あ~、大事なことをもう一つ。VPTは歯髄を保存できる有用な方法になりますが、歯髄近辺を処置するので、ほぼ確実に歯髄の石灰化、狭窄化が生じます。つまりVPTがうまくいかないと根管治療(歯髄を取る処置)へ移行しますが、この根管治療が難しくなります。場合によっては根管治療を諦めて、外科的な処置に移行する場合もあります。

どの治療にもメリット、デメリットがあるということです。

 

 

長文になりましたが、歯髄を保存できるかの瀬戸際の処置が、顕微鏡使おうが、1時間かけようが、日本では1,200円くらいです(笑)。桁間違ってない??

歯髄を被覆するためのMTAの材料費にもなりません。

なので、歯髄を保存する、今まで述べたVPTを保険診療で行うことは今後、考えておりません。

値段設定はまだ考慮中で、根管治療の抜本的な見直しと合わせていきたいと考えています。

 

今は、顕微鏡つかって、NI-Tiロータリーファイル使って、バイオセラミック根管充填剤つかって、保険でやっていますが、今後は変えていきますよ。

 

今現在、当院で根管治療を受けたり、VPTを受けている方は、じつはかなりお得なのです。
まあ、今は修行中ということで。

さて次回(第9回)は「歯根端切除の序章、支台築造の実習」になります。

博多駅前はクリスマスのイルミネーションで華やかで、人も賑わっています。

 

これから冬場を迎え、飛行機が無事に飛んでくれるか心配・・・。

Basic Course2025への参加 世界基準の根管治療を目指して⑦

2025/11/02


新潟市西区 歯周病専門医 いとう歯科診療室のブログをご覧頂きありがとうございます。

 

今回は再根管治療についての実習でした。

はて?

再根管治療って何?

深い虫歯や、外傷などにより、一度歯医者さんで根管治療(歯の神経をとると表現される)を受けたが、不幸にも根管内に存在するバクテリアに免疫系が勝利することができず、根尖病変ができてしまうことです。

ほとんどの場合、慢性的な病変となるため、症状が出ることは乏しいですが、骨内部に細菌感染が生じているという意味では、歯周病と共通点があります。

なので症状がなくても良い状態とは言えませんし、根尖病変には大腸菌をはじめ、様々なバクテリアが存在しています。

 

日本では再三、お伝えしておりますが世界基準で根管治療が行われていないため、初回の根管治療の成功率が先進諸国の中では著しく低いため、再根管治療が多い、先進国のなかではお祭り状態です。

 

一度、歯医者さんがそれなりに治療した部位というのは、再度、治療を行うにしても初回に比べて成功率は下がります。

 

米国では初回の根管治療を世界基準で行うため、再根管治療のケースが著しく少なく、再根管治療を飛ばして次のステージ、つまりは歯根端切除、意図的再植へ移行します。

 

1回目の根管治療がどのような状況下で行われているのか?どのような治療がなされているのか?が再根管治療の難易度を左右すると思います。

 

これが面白いことに、拙い治療が行われていれば、再根管治療で治癒する可能性が高いのです。

一番大変なのが、ラバーダムもせず、口腔内のバクテリアが入り放題の状況で一生懸命根管治療が行われ、必要ないのにガッツリとメタルポストが装着されているケース。

元々の根管の形態が破壊されているケース、歯肉に近い位置で歯に穴が空いているケース、その難易度は様々です。それぞれ成功率の目安があります。やってみないとわからない部分もありますが、それぞれのケースで成功率の目安があるのがアメリカの歯科教育の先進性を感じてしまいます。

 

前回、座学で再根管治療のあれこれを学びましたが、今日は装着されたメタルポストコアの除去方法、根管内のガッタパーチャの除去方法、再根管形成の実際、などについて実習しました。

 

メタルポストを外す際に、ドライバーや、ましてや兼松鉗子を使用することはありません。歯根破折を誘発するので。

 

セメントのラインが出るまで、歯質をなるべく削らないよう、専用の切削バーを用いながらメタルポストを削ります、あとはVPチップを装着した超音波で除去していくというもの。

この専用の切削バーは単回使い切りで約3,000円します。保険診療ではポスト除去は600円だか800円だかしか頂けないので、1本のバーですでに赤字です。この値段設定した人は自分でメタルポストを外したことがない人でしょうか?まあ、それは日本の医療あるあるなので。

 

再根管治療は、最初の根管治療に比べて、除去しなければならない物も多く、器具も増えるし大変です。

 

メタルポストコア、ファイバーポスト、コアレジンなどを除去して、根管内に充填されている、薬(ガッタパーチャ)を除去したあとは、通常の根管治療のプロトコールに戻ります。

 

このガッタパーチャを除去する手順も、従来の日本の方法では効率が悪いため、そのための薬剤と超音波、除去するための器具を使用して根管内になるべく残存しないよう除去していきます。

 

顕微鏡で内部を確認しながら進めていくので、今までのようになんとなく除去して、根尖まで器具が届けばよし、という状況から一変しました。

今までも再根管治療は大変だったけど、もう少し、確実に丁寧で、システマチックに進めることができそうです。ただ、丁寧に進める分、時間はかかります。

 

パラレルに入ったメタルポストは外せない!一度根管内に入れたものは完全には除去できない!ことを僕ら日本の歯科医師は考えた方が良いですね。

 

そして相変わらず素晴らしい実習施設。すべてのデスクに顕微鏡が完備され、歯科治療に必要なタービン、エンジンもある。これがとても獣医師の研修施設とは思えない。

自費診療の獣医師と、保険診療の歯科医師、気づいたら随分と差がついてしまったようです。

 

さてこのコースも中盤を過ぎ、次回は最後の座学「生活歯髄療法」です。これは自分も今まで取り組んでいた分野なので、楽しみです。

Basic Course2025への参加 世界基準の根管治療を目指して⑥

2025/11/02


Basic course2025への参加 世界基準の根管治療を目指して⑥

新潟市西区 歯周病専門医 いとう歯科診療室のホームページをご覧頂きありがとうございます。

 

今回は6回目「再根管治療の意思決定と実際」についてでした。

 

「なんか根っこの先の方の歯ぐきが腫れて、つぶれました、長い間くりかえしています。」

 

よくある患者さんの主訴のひとつ。根尖病変からの膿の出口、いわゆるサイナストラクトがある状態。

前医で根管治療を受けていたが、再発した場合の対処法について学びました。

 

1回治療を受けて再発しているので、大体の場合が治療の成功率は低下しますが、そのなかでも再治療によって治癒が見込めるケースとそうでないケース、について理解を深めることができました。

 

要はやみくもに再治療するのではなく、ケース選択が重要になります。根管治療が充分に行われていない場合、未処置の根管がある場合、根管治療後の補綴処置(被せ物)があまい場合、などは再治療の価値があるかもしれません。もっと分類がありますが、ここでは省きます。

逆に再治療では厳しいケースは、前医が一生懸命治療しようとして、根管形態が保たれてない場合、根管に穴が空いている場合、根尖が破壊されている場合、などです。

なにしろ、口という狭い視野で、根管という見えない部分を治療するので、優秀な歯科医師でもこのようなトラブルは治療と隣り合わせなのです。なのでアメリカでは高額なのです。

 

むし歯も歯周病も、そして根尖病変も、歯科における病気は細菌感染症です。

根管治療後に補綴処置があまいと、隙間から細菌感染し、根尖病変にまで至ることもあります。根尖病変からは大腸菌が検出されるというのも驚きです。

 

ほんとはしっかりした根管治療を受けたら、精密な補綴が必要になります。

これを保険で行っていくのはかなり困難など感じています。

 

また、「歯ぐきが腫れて、つぶれて、を繰り返しています」という状態。

口腔内から膿の出口を通して、細菌は根尖に行ったり来たりフリーパスの状態になるので、根管治療での治癒率が著しく低下します。

長期間の放置はその歯を根管治療で治癒に導くには難しくなることを理解して欲しいと思います。

ただ、症状にでることは少ないので、残念ながら放置しがちです。

 

再治療で治癒するかもしれない!となっても、テクニカルに困難なことが多いのです。

装着された土台の除去、根管内に充填された薬の除去、再根管形成や、根充方法について学びました。

 

次回は7回目、上記のテクニカルな部分の実習になります。

どれくらい早く土台が除去できるのか、楽しみ。

Basic Course2025への参加 世界基準の根管治療を目指して⑤

2025/11/02


新潟市西区 歯周病専門医 いとう歯科診療室のホームページをご覧頂きありがとうございます。

 

ブログの文章は出来上がっていたのですが、アップするのを忘れていました。

連続投稿になります!

 

今回は5回目「根管洗浄(根管洗浄剤の種類と選択、positive PressurePatency fileMDAUltrasonicSonicNegative Pressure)、根管貼薬、仮封についてでした。

 

神経と血管が入っていた管である、根管をいかに洗浄していくか、という話です。これも日本では歯科医師ごとに方法は千差万別だと思います。

 

各研究から最良の方法は何か、トラブルが起きないようにするにはどうしたらよいのか、比較検討し、それを大学で教える米国のやりかたを実感することになりました。

 

しかも、結論から言うと「どのような薬剤で、どのような方法で洗浄するかより、根管形成がどのような環境下で行われているか、の方が大事」という結論には驚きました。

「どのような環境下」という意味は、しっかりラバーダム(ゴムのマスク)がされているか、滅菌済みのファイルを使用しているか、洗浄液に浸しながら根管形成しているか、などのことを意味しています。

もう、次亜塩素酸ナトリウムと過酸化水素水の交互洗浄などは話にも出てきません。

 

次亜塩素酸ナトリウムは開封した時点で、濃度が徐々に低下するので、濃度を一定に保ったまま使用するのは不可能。なので、できるだけ冷蔵保存して、使用する前に希釈するなどの手間が必要だが、濃度に関してはそれほど繊細にならず、ざっくりの管理でよいとのこと。

 

根管洗浄といえども、色々な方法、器具があり、どれを選択していけば良いのか?超音波?音波?は使用するか。洗浄針のサイズは?洗浄針の形態はopen?かclose?かなど、よくわからなかった。なんとなく大学で教わったこと、勤務先で教わったことをミックスして我流で行っていました。

今日の講義を聴いて、上記のことが明確になり自分なりのプロトコール(レシピのようなもの)ができあがりそうです。

 

また少しレベルアップ。

 

来月は再根管治療(前医で治療を受けた歯の再治療)について学びます。

また色々と視野が広がりそうで、楽しみ。

歯ぐきが下がってきた?
──歯周病専門医が教える「歯肉退縮」の本当の原因と対策

2025/10/30



鏡を見て、「歯が長くなった」「すき間が目立つようになった」と感じたことはありませんか?
実はそれ、歯が伸びたのではなく、歯ぐき(歯肉)が下がっているサインかもしれません。
歯ぐきが下がると、見た目の変化だけでなく、根元が露出して知覚過敏むし歯の再発を引き起こすこともあります。

 

歯ぐき下がりの主な原因

歯周病による骨の吸収

歯を支える骨(歯槽骨)が歯周病によって失われると、歯ぐきもそれに合わせて下がります。
歯ぐき下がりの原因の多くは、実はこの「骨の吸収」です。
歯周病を放置すると、再生が難しいレベルまで進行することもあるため、早めの診断が大切です【文献1,2】。

いとう歯科診療室では、日本歯周病学会認定の歯周病専門医が在籍し、
レントゲン・歯周ポケット検査などを組み合わせ、骨や歯ぐきの状態を科学的に診断します。

歯周病について詳細はこちら>>

 

強すぎるブラッシング

「しっかり磨かないと汚れが落ちない」と思っていませんか?
実は、硬い歯ブラシや強い力でのブラッシングは、歯ぐきを物理的に削ってしまうことがあります。
特に歯ぐきが薄い方は、退縮しやすい傾向があります【文献3】。

歯ブラシは「ふつう」を選び、力を抜いて優しく小刻みに磨くのが理想です。
当院では、歯科衛生士による個別ブラッシング指導を行っています。

 

歯ぐき下がりを防ぐ3つの習慣

  1. 早めの歯周病治療
     骨の喪失を止めることが最優先です。炎症を取り除き、メインテナンスを継続することで進行を防ぎます。
  2. 正しいブラッシング習慣
     やさしく・短く・一定のリズムで磨く。毛先が開いた歯ブラシは早めに交換しましょう。
  3. 定期的なメインテナンス
     歯周病は自覚症状が少ない病気です。34ヶ月に一度の定期ケアが、将来の歯を守ります。

 

すでに下がってしまった歯ぐきには?

審美的・機能的な改善を目的に、次のような方法があります:

  • コンポジットレジン修復
     歯の根元にレジンを重ねて見た目を整える方法。
  • 歯周外科治療(CTGGTR・エムドゲイン)
     歯槽骨を再生させる外科的治療法。専門的な技術と診断が必要です【文献4,5】。

当院では、患者さん一人ひとりの歯ぐきの厚み・骨の状態を精密に検査し、
再生療法の適応かどうかを見極めて最適な治療方針をご提案しています。

 

小さなサインを見逃さないでください

歯ぐきの変化は、ゆっくり進行するため気づかれにくいものです。
しかし、早期発見・早期治療で進行を止められるケースは多くあります。

「歯が長くなった気がする」
「歯ぐきが下がってきた気がする」
そんな時は、日本歯周病学会の専門医が在籍する いとう歯科診療室にご相談ください。
科学的根拠に基づいた診療で、歯と歯ぐきの健康を守ります。

 

参考文献(エビデンス一覧)
No 文献タイトル 出典
1 歯肉退縮と歯頸部摩耗についての疫学的研究 J-Stage
2 歯肉退縮について,予後因子や補綴前の配慮について 東京歯科大学リポジトリ
3 成人における歯肉退縮の発現状況と要因解析 CiNii 論文情報
4 歯周組織再生療法ガイドライン 2023 日本歯周病学会
5 トンネル形成術+結合組織移植の臨床報告 J-Stage

 

いとう歯科診療室(Ito Dental Office

日本歯周病学会認定 歯周病専門医/日本歯周病学会認定歯科衛生士在籍
950-2157 新潟市西区内野西が丘3丁目10―15
 https://www.ito-dental-office.jp

なぜ何枚もレントゲンを撮るの?  〜歯周病治療と予防に欠かせない検査〜

2025/09/25




こんにちは、新潟市西区・いとう歯科診療室です。
当院は歯周病専門医と歯周病認定歯科衛生士が在籍し、歯周病治療と予防を専門に行う歯科医院です。

診療の際に「またレントゲンを撮るんですか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、特に歯周病治療や予防に力を入れる当院では、デンタル撮影は必須の検査です。

 

デンタル撮影(小さなフィルム)が必要な理由

歯周病は「歯ぐき」だけでなく、歯を支える「骨」が徐々に壊れていく病気です。
デンタル撮影は、歯と歯の間の骨の吸収や小さな病変を精密に確認できるため、歯周病診断には欠かせません。

たとえ見た目には異常がなくても、デンタル写真でしか確認できない「骨の状態」や「歯と歯の間のむし歯」があるのです。
だからこそ、当院では検査のたびに複数枚のデンタル撮影を行い、精度の高い診断と治療計画を立てています。

 

パノラマ撮影(大きなフィルム)の役割

パノラマ撮影では、歯並びや顎関節、親知らずの位置など、お口全体の大まかな状態を把握できます。
ただし、歯と歯の間の小さなむし歯や骨の微細な変化までは写りにくいため、歯周病の精密診断にはデンタル撮影の方が適しています。

 

CBCT3D画像)の役割

歯周病が重度の場合、手術へと移行する可能性が高い場合などでは、2次元のレントゲンでは限界があるため、CT撮影を行うことがあります。

歯周病による骨の欠損状態が3次元で把握できるため、歯周病の診断には非常に有効です。

 

治療や予防での活用

歯周病治療のステップごとにデンタル撮影を行うことで、

・骨の吸収がどこまで進んでいるか

・治療やクリーニングで改善しているか、つまり治療の結果、

骨が安定してきているか、歯石が除去できているか
を確認できます。

これは「削って治す」ためではなく、歯を残すための精密な記録なのです。

 

 

被ばく量についての安心

「何度も撮って大丈夫?」と不安に思われる方もいるかもしれませんが、歯科用X線の被ばく量は非常に少なく、安全性は確立されています。
デジタル機器により、さらに低線量での撮影が可能になっていますのでご安心ください。

一番被曝量の多いCT撮影でも、飛行機で成田―ロサンゼルスを往復するくらいの被曝量です。

 

まとめ

・デンタル撮影は歯周病の診断・予防に必須 ⇒ これが診断の基礎になります

・パノラマ撮影は全体像を把握する補助的な役割

CT撮影は骨の欠損状態などをさらに精密に把握することができます

・治療や経過観察ごとに撮影し、改善や進行を正確に把握

・被ばく量はごくわずかで安心

 

いとう歯科診療室は、歯周病専門医と認定歯科衛生士による専門的な診療を通じて、患者さんの未来の歯を守ります。
そのために、デンタル撮影を欠かさず行うことをどうぞご理解ください。

 

当院は治療の前に必ず検査(レントゲン撮影・歯周病検査・口腔内写真撮影など)を行います。

>>詳しくはこちら

歯学部3年次編入について

2025/09/15

新潟市西区 歯周病専門医 いとう歯科診療室のホームページをご覧頂きありがとうございます。

今日は「歯学部3年次編入について」です。 歯学部3年次編入を考えている人に向けた記事になるので、かなり少数に向けた記事になりますね。しかも、伝えたいことがたくさんあるので、かなり長文です。

私はこの3年次編入制度を使って新潟大学歯学部に編入しました。

東京の某国立大学農学部を卒業し、大学院へ進学、修士課程を修了し、一部上場企業へ就職しました。 時は就職氷河期真っ只中。文系私立大学を卒業した友人は100社受けていました。
それでもなかなか内定がもらえない、そんな時代です。今では考えられないかもしれません。

実際、就職活動で精神的に追い詰められる学生も多数いました。

就職活動って、獲得点数で合否が判定される試験とは違い、何が原因で内定がもらえないのかわからないので、ストレスがたまっていきます。
理系も就職活動は大変でしたが、文系はさらに苦労していたのを経験しているので、
理系と文系に迷ったら、やはり理系が良いと思います。

今は人手不足だからそれほど変わらないのかもしれないけど。

それでも私が入社した会社の倍率はエントリーシートから計算すると、500倍だったと入社後、人事課から聞きました。
当時、両親もことさら喜び、これで息子の将来も安心、ホッとしたのも束の間、突然、歯学部に編入すると言い出したので、両親、兄から猛反対に遭いました。

なぜ、大企業を辞めて、歯学部に編入したいと思ったか、詳しくは触れませんが、優秀な同期たちに囲まれ、何十年も会社で働くイメージができなかった、ということでしょうか。
今となっては少し判断が性急だったかなと思います。
私の入社した会社は本当に良い会社でした。

さて、なぜ両親、親族が猛反対したのでしょう? 大企業とはいえサラリーマンと歯医者、どっちが職業として良いのでしょうか? 職業としてどっちが良いか、それは自分次第なので、答えはでないでしょう。

今から20年前、その当時から歯科医師はワーキングプア、歯科医師余剰、淘汰の時代、と世間では言われていました。
なので、両親や親族は私の将来を危ぶみ、安定した会社員からの転身に反対したのだと思います。

でも、当時の私は「自分はやっていける!必ず成功できる!」と盲信しておりました。

歯科医療がどのようなシステムのうえに成り立っているのか? 国民皆保険とは? 他の先進国との違いとは?など、もちろん知らずに・・・。

今、会社員に漠然と不安を感じている方、勤めている会社や境遇に満足できず、手に職を付けて、歯科医院という一国一城の主になって、思い通りに働いてみたい、歯学部に編入したい、と思っている方に、少しでも参考になればと思います。

では早速、歯学部3年次編入について、私見ではありますが、思っていることを列挙していきます。

・年齢の問題、編入時に30歳がギリギリ、できれば20代。

歯科医師の仕事は非常に細かい作業で、体力も気力も使う職業です。特に目が見えなくなります(老眼で)。
今はルーペとか顕微鏡とかもありますが、スキルアップ、体力の衰えなどを考慮すると、できるだけ若いうちに歯科医師になった方が良いということです。
あと、歯学部は他の学部に比べると単位取得がシビアなので、脳が若くないと大学卒業、国家試験で苦労します。
40代後半で編入してきて、歯科医師になる以前の学部の単位取得、国家試験で非常に苦労する方をみてきました。
これらの試験をパスしていかないと、歯科医師として舞台に立つことすらできません。

・歯科医師になってやりたいことが明確であるか
なんとなく歯科医師になったら成功するだろう、みたいな感じだと後悔します。
何をもって成功と判断するのか、難しいですが、優秀な歯科医師としてまっとうな仕事をしていくには、自分の将来像をイメージできる明確な意思、よいメンター(指導医)、良い環境(じっくり診療、勉強できる環境)が大事です。 それは自分の情熱がそういう環境を引き寄せます。
なんとなく過ごしていると、保険診療で安い、悪い、早い診療ばかり身につき、心身ともに疲弊します。

例えば、矯正医になる!とか歯周病専門医になって自費で治療する!とかエンド専門医になる!とか明確な目標を早く定めた方がいいですね、周囲の学生より年をとってるので、最短で目標にたどり着けるような努力が必要だと思います。

・日本の医療制度を知るべし

これは別の回で詳しく述べたいと思っていますが、日本の診療報酬は、海外の先進諸国と比べると絶望的に低いのです。
日本の保険制度に属さず、自費診療で高度な医療を提供するという目標がすでにあるのであれば、関係ありませんが、それはそれで非常にスキルが求められる道です。
ほとんどの歯科医師が日本の保険制度に属した保険医です。
どんなに丁寧に診療しても報酬は変わりません、患者さんが納得するまで丁寧に説明しても、それは診療報酬として認められません。
今、若い医師が修行の期間を設けずに、美容外科に走ってしまう。いわゆる「直美」が問題になっていますが、これは医師の問題ではなく、構造の問題だと思っています。
低廉な診療報酬で、朝から晩まで病院で働き、宿直もある。 今までは矜持とかやりがいでなんとか保っていたものが、崩壊しつつあるのだと思います。
日本は特にエッセンシャルワーカーに対する「やりがい搾取」が顕著な国だと思います。

1つだけ例を挙げましょう。日本では臼歯の普通抜歯に対する技術料は2,700円ですが、米国では40,000円です。 どうですか? 米国の歯科医師が日本の診療報酬を聞くと、腰を抜かします。
もっと色々調べてみると面白いと思いますよ。

つまり、日本の保険制度は統制経済で自由経済ではありません。自分で値段設定ができず、国の統制下にあります。 この統制下の元、国民はどこでも、安価で治療を受けることができます。 それは患者さんにとって、この制度の最大のメリットです。
この先進国では良い意味でも、悪い意味でも稀にみる保険制度の下、どうやって生き抜いていくかは、 医療人として非常に難しい問題です。

今の医療現場をみると、インフレ、働き方改革が進むなか、保険制度の悪い面が際立ってきて、医科では病院経営の赤字化、看護師の離職、医師の偏在、直美問題などが、歯科では歯科技工士の絶望的な減少、歯科衛生士の離職率増加、歯科材料店の減少などが生じているのだと思います。

・実家が資産家か?
歯科医師はそのほとんどが開業します。もし、歯学部に編入して大学に残って教授を目指したい、とか研究者になりたいと思っている方には関係の無い話です。それはそれで良い道だと思います。
しかし、あなたが編入して歯科医師として独立したいと思っているのであれば、経済状況というのは無視できません。

ざっくりですが、テナント開業では5,000万円ほど、戸建て開業だと1億円ほどかかります。 ですから、たとえば親が土地やビルを持っていて、開業地はすでにあるとか、今盛業である親の医院を引き継ぐ、とか親が資産家で開業時には数千万の資金援助が得られる予定とかあるのであれば、あなたの編入後の道は明るいかもしれません。

開業のコストを下げるために、居抜き開業とかもありますが、これはこれで気をつける点が多数あります。特に開業地の選定などには気をつけて、失敗しないようにしなければなりません。

・最後に
歯科医師に転身する際は、あれだけ猛反対だった両親、親族は今では心から応援してくれています。
それは365日の食事、話すこと、審美にとても重要な役割を果たす歯科医師という職業をとても大事な仕事だと実感してくれているからです。
今では「歯科医師という仕事は、健康のインフラの一つで、とでも大事な仕事だ。」と言ってくれます。

歯科医師に転身したいとカミングアウトしてから20年、両親も兄も少なからず歯のことで歯科医師の世話になり、 その重要性を実感したのでしょう。

歯科医師は大変で、そして重要な仕事だと思います。歯科医師になりたいという純粋な思いを持った方が、まだ書ききれないけど、歯科医療の実情を理解した上で、それでも飛び込んでくることを願っています。

歯周病と糖尿病 ー歯周病治療で、たった0.4%の奇跡ー

2025/09/08



「歯周病治療で、たった0.4%の奇跡」


みなさん、こんにちは。新潟市西区いとう歯科診療室です。
当院には、歯周病専門医と歯周病認定歯科衛生士が在籍しており、日々多くの患者さまの歯ぐきの健康を守っています。

さて、健康診断で「血糖値が高め」と言われたことはありませんか?
特に中高年の方から、このようなご相談をいただくことが増えています。

「症状はないから大丈夫」と思ってしまいがちですが、それは 境界型糖尿病(糖尿病予備軍) のサインかもしれません。放っておくと、本格的な糖尿病に進んでしまう危険があるのです。

 

インスリンと歯周病の深い関係

血糖値のコントロールに欠かせないのが「インスリン」というホルモンです。
インスリンは、食事でとったブドウ糖を体の細胞に届ける「鍵」のような役割をしています。

ところが、歯周病による炎症はこのインスリンの働きを邪魔してしまいます。
さらに喫煙習慣がある方では、歯ぐきの血流が悪くなり、歯周病が進みやすい状態になります。つまり、歯周病を放置することは血糖値を上げてしまう原因のひとつになるのです。

 

歯周病治療で血糖値が改善する?

アメリカ糖尿病学会の研究によると、歯周病治療を行うことで HbA1c(血糖値の指標)が平均0.4%改善 することが報告されています。

0.4%なんて小さな数字」と思われるかもしれません。
しかし、この差は「糖尿病になるかどうか」の分かれ目になる、大きな意味を持つ数字です。

薬に頼らずに血糖値を下げられる方法のひとつとして、歯周病治療はとても価値があるのです。

 

専門チームがサポートします

いとう歯科診療室では、歯周病専門医と認定歯科衛生士 が連携し、科学的根拠に基づいた治療とケアを行っています。
「タバコはなかなかやめられない」という方でも、まずは歯ぐきの炎症を取り除くことから始められます。

歯周病治療は、歯を守るだけでなく、全身の健康につながる治療です。
中高年の皆さまが「これからも元気に暮らすための投資」として、ぜひ一度チェックを受けてみてください。

 

まとめ

・歯周病の炎症は血糖値を悪化させる原因になる
・歯周病治療でHbA1c 0.4%改善 することがある
・専門医・認定歯科衛生士によるケアは、将来の健康に直結する

いとう歯科診療室は、地域のみなさまの 「歯と全身の健康」 を守るために、いつでもお手伝いします。


>>歯周病治療についての詳細はこちら

参考文献
American Diabetes Association (ADA). Standards of Medical Care in Diabetes—2019.
Diabetes Care 2019;42(Suppl. 1):S1–S193.

Basic Course2025への参加 世界基準の根管治療を目指して④

2025/08/29


このコースもはや4回目、1/3が終了したことになります。

今回は「細菌の減少と拡大号数、歯根破折を防止するような根管形成方法は?最良の根管充填方法とは何か」の講義を受けてきました。

 

アメリカのすごいところは、様々な治療方法を基礎、臨床研究から良い方法を検討して、採択し、大学にてしっかり教育するところでしょう。

日本では根管治療の講義はどうなっているのだろう。私がいた頃と変わらない内容だとしたら、かなり遅れていることになる。

 

従来の方法で根管治療を行うと失活歯のトラブルの代名詞、「歯根破折:歯の根が折れてしまうこと」が生じやすいが、現在、学んでいる米国式根管治療を行えば歯根破折は防ぐことができる。

皆さんにはわかりやすく「神経と血管を除去した失活歯は脆くなるので、歯根破折が生じやすい」と説明していますが、マニアックに説明すると、その神経と血管を除去する方法によって歯根破折が生じやすいか否かが決まるということです。

 

細菌を除去でき、あまり大きく根管を削らない号数はいくつなのか、手間がかからず、緊密に根管を充填する方法はどのような方法なのか。

 

講義を受けて明確になりました。

 

日本では一番の不採算部門である根管治療。最新の方法を学ぼうとする熱意を持った先生方の中で勉強していくことは自分のモチベーションにもなります。

 

また来月、講義ととんこつラーメンを楽しみに、日々精進。

いとう歯科診療室のOHI:専門性に裏付けられた5つの支援

いとう歯科診療室のOHI:専門性に裏付けられた5つの支援

2025/08/25

当院では、日本歯周病学会 認定歯科衛生士が中心となって、以下の5ステップに基づいたOHIを実施しています。

ちなみにOHIとはOral Health Instructionの略で、歯科衛生士が行う口腔衛生指導全般を意味します。

  1. リスク評価の可視化
     プラークコントロール指標・BOPなどの数値化
  2. 行動の振り返り
     食習慣・睡眠・清掃習慣のヒアリングと整理
  3. 課題の共有
     患者さんと一緒に優先順位と行動目標を設定
  4. 個別指導の実施(TBI含む)
     清掃技術とリスク対策の実践支援
  5. 再評価と行動支援
     改善の定着と継続支援(中長期の評価も含む)

私たちは「できていないことを指摘する」のではなく、
「できることを一緒に見つけて育てていく」スタンスでサポートします。

 

■ OHI未来の歯周組織を守る 

OHIは、歯周病の予防・再発防止において、最も科学的かつ現実的なアプローチです。

TBIは「今日の磨き方」を変える支援。
OHI
は「明日の歯を守る」ためのトータルサポートです。

歯周病の初期は自覚症状に乏しいため、生活の中にリスク管理を組み込む視点が重要です。

 

歯周病専門医と認定衛生士が連携して支える

いとう歯科診療室では、日本歯周病学会認定 歯周病専門医と、
日本歯周病学会 認定歯科衛生士が連携し、科学的根拠に基づいたOHIを提供しています。定期検診やメインテナンスを通じて、
「通うたびに今の暮らしを見つめ直せる歯科医院」でありたいと願っています。

歯を残すためには、患者さんと医療者が同じ方向を見て支え合う共同作業が欠かせません。
生活に寄り添うOHI、いま一度見直してみませんか?

>> いとう歯科診療室